雨のあとに
あたしを知らないと言うディーンは辺りを見て怒っていた。

『そんなことよりこの有り様はなんだ!?まったく気がつけば訳の分からん場所にいるわ、やっとの思いで城に戻ってみれば街は焼け城は壊れている。何がどうなっているか説明してくれ。』

『ディーン、ちょっとこちらに来て下さい。』

カーダはディーンの腕を引っ張ってあたしから離れた場所で話し始めた。話しが終わったあと、カーダがディーンの状態を説明してくれた。

『陛下、どうやらディーンはここ2・3年ほどの記憶を失っているようなのです。ですから陛下のことも・・・。』

カーダの話しを聞いたレオンやエレットがディーンにあたしのことを話してくれた。

『兄上、アメのことを覚えていないとはどういうことですか!?』

『ディーン、アメはディーンの婚約者なんだぞ。』

エレット達の言葉にディーンは苦しそうに頭を抱えた。

『私は・・・私は・・・覚えていない。』

『ディーン!!』

『兄上!!』

『もういいよ、もう止めて。』

これ以上ディーンの苦しそうな顔はみたくない、そんな気持ちが溢れ出したように叫んでしまった。

それからあたし達は街から離れ、丘の上から壊れた国を眺めていた。あんなに綺麗だった国、あたしの国は今では見る影もなかった。目をそらしてもそらした目線の先には傷ついた人々の姿がある。

これは全部レインがしてしまったこと。もしレインが扉を開いて魔王を手に入れたら世界中がこの国みたいになってしまう。それだけは止めないといけない、たとえレインを殺してしまうことになったとしても。
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