雨のあとに
周りを見渡すと傷ついた人たちが絶望を感じながら手当てを受けている。その中に腕をケガした少年が泣きながら母親と手当てを受けるのを待っていた。

ダメダメ、あたしは女王なんだからしっかりしないと!落ち込んでるヒマなんてないんだから。あたしは立ち上がってさっきの少年に近づいた。

『ねぇキミ、手を出して。あたしが治してあげるから。』

笑顔を向けながら少年に話しかけると、少年はあたしの顔を見て母親の後ろに隠れた。そんな子供に母親は焦りながらあたしに謝った。

『申し訳ありません。ほら、せっかく陛下が怪我を治してくださると言ってくれてるんだからこっち来なさい。』

『嫌だ!』

少年は母親の手を振り払って、ますます離れて行った。あたしはもう一度少年に近づいた。

『大丈夫、痛くないからケガを見せて?』

あたしが少年の腕を触ろうとしたら少年は叫びながらあたしの手を叩いた。

『僕に触るな、化け物!』

その言葉に母親は恐怖の顔を浮かべながら子供に叫んだ。

『陛下になんてこと言うんだい!申し訳ありません、どうか御勘弁を。』

母親は震えながら土下座をして謝ってきた。

『大丈夫、気にしないで。』

『ありがとうございます、ありがとうございます。』

あたしはジンジンと痛む手を握りながら親子の顔を見た。

あたしを見る2人の顔には恐怖が浮かんでいた。他の人も同じように恐ろしいモノを見るような目であたしを見ている。まるで・・・化け物を見るような。

『あ、あたし・・・。』

『アメどうかしたのか?』

後ろからのレオンの声に振り向いた。

『何でもない。』

そう言い残して走ってその場から逃げ出した。
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