雨のあとに
あたしじゃない、あたしがやったんじゃない!だけど、あたしとレインは同じように造られた。あたし達は化け物。

あたしに向けられた恐怖の目が頭から離れてくれず、無我夢中で走っていると誰かの背中にぶつかって転んでしまった。ぶつかった相手はディーンだった。

いつものディーンだったら、「全く、どこを見て歩いているのだ。アメは本当に世話がかかるな。」なんて言いながら怖い顔だけど少し笑いながら手を差し出してくれる。だけど今のディーンは・・・。

『貴様か、何をしている?遊びたいのなら他を行け。』

ディーンはあたしを睨みつけてまた前を向いて兵士たちに指示を出して作業に戻った。期待してた訳じゃない。だけど・・・だけど・・・あたしの好きだったあなたはもう居ないんだね?

『何だ、まだそんな所に居たのか。用がないなら・・・なぜ泣いている?』

涙に気づいてそれを拭いながら立った。

『な、泣いてなんかないよ。転んだ時に目にゴミが入っちゃただけ。ごめんね邪魔しちゃって、直ぐに向こうに行くから。』

ディーンは鼻で笑ってまた作業に戻った。離れる前にどうしても言いたいことがあった。

『ねぇ、一つだけ聞いていい?』

『何だ?』

ディーンは振り向かずに答えた。

『あなたには生きる時間が違っても一緒にいたいと思える人っている?』

強い風が吹き、あたしたちの間にほんの少し、本当に少しだけどあたしにはとても長い沈黙があった。

『・・・そのような者はいない。』

心がきしむように痛んだ。

『そっか・・・、変なこと聞いてごめんなさい。』

泣きそうなのを必死でガマンして歩いて離れようとするとディーンに呼び止められた。

『待て。』

潤んだ瞳を隠して振り向いた。

『なに?』

『貴様にはいるのか?そのような者が。』

出来る限りの笑顔を作って答えた。

『居るよ。初めて好きになった人で、誰よりも大切な人。今はちょっと遠くに行っちゃったけど、また会えるって信じてる。』

『そうか、その者に会えると良いな。』

『ありがとう。』

振り返った時にはガマンできず、涙が溢れてしまった。
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