雨のあとに
どうも話が噛み合わない。なんか頭がムズムズする。そっか、あたしカツラ付けてたんだ。髪に絡んでちょっと外しにくかったけどなんとか外すことができた。

『うわああああっ!!』

急に少年が騒ぎ出した。

『どうしたの?』

『か、髪が・・・』

『ああ、これ?カツラよカツラ。カツラ知らない?』

『黒い髪に黒い瞳、双黒の魔女だーーー!!』

『え?ちょっと待ってよ、魔女って。』

『誰か、誰か来て!!』

『待って、何もしないから。』

少年の叫び声を聞いて人が集まってきた。帽子をかぶった中年男性は少年の父親らしく、少年を背中に隠してあたしを威嚇している。5・6人の大人があたしを睨んで「魔族」と「魔女」の2つの言葉が耳に入る。

『あの、あたし・・・』

『気をつけろ、魔女は魔術を使う。』

『あたし魔女でも魔族でもありません!』

『騙されんぞ!その双黒がなによりの証拠だ。』

双黒?もうナニがなんだか、ここの人達って何かおかしい。しびれを切らしてあたしに襲いかかってきた。あたしの口を布で塞いで、手足を紐で縛って動けなくされてしまった。それからあたしは倉庫みたいな所に閉じ込められた。

手の紐が緩んで解くことに成功して、口の布と足の紐を外した。倉庫の中には干し草とバケツが二つそして男ものの作業服が掛けられている。

今の自分の姿をみると、ドレスは泥だらけでところどころ破れてる。こんな格好じゃ恥ずかしいから作業服に着替えることにした。ブカブカだけどさっきよりマシな格好になったけど、どうみても男の子に見える。
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