雨のあとに
ピンと張りつめた空間の中で、カチコチと時計の針の音だけが響いた。しばらくしてドアの向こうから人の足音が聞こえてくる。

2人…ううん3人いる。別に気づかれないように近づいている訳じゃないけど、もしかしてそれが相手の作戦かもしれない。ドアノブが回り、ゆっくりとドアが開く。

シーバは剣の柄を掴んで、お父さんはあたしの前に立った。そしてあたしは鍵を握りしめて、いつでも剣に変えれるように準備をした。

最初に部屋に入ってきたのはがっしりとした体型をした兵士で次にさっきもランジュさんの隣りにいた貴族の男の人、最後にランジュさんが入ってきてドアが閉まった。

『そんなに構えなくても大丈夫ですよ。』

ランジュさんがニッコリと笑ってその場の空気を和むように話した。あたしは不思議と体の力が抜けた。

『あの…どうしてあたし達のことを信じてくれたんですか?』

『ウフフ、それではまるで疑って欲しいと聞こえますよ?』

笑っているランジュさんに慌て訂正した。

『あっ、いや、そういう事じゃなくて。普通だったら信じてもらえるような話じゃないから…。』

『確かにそうですね。だけど相手を疑うより、信じて騙された方が気が楽ですから。』

『気楽?』

ランジュさんの不思議な答えをお父さんが繰り返した。

『はい、その方が容赦なく相手を倒せます。』

ランジュさんは笑顔で返事をする。あたしはその笑顔にゾクッとする寒気を感じた。そしてそれがランジュさんからの最終警告だと分かった。
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