雨のあとに
レインの居場所を分かってから3日目、あたしは船のデッキで海を眺めながらカカロンに到着するのを待っていた。

カカロンという言葉を聞いてからあたしの中には不安と恐怖が渦巻いている。カカロンには恩人のアレクがいる。

アレクはあたしのことを好きだと言ってくれた人、その気持ちに応えられないあたしに笑顔を向けてくれた。アレクはあたしにとって大事な人なのにレインがカカロンを襲ってしまったら…。

『どうしたんだい?』

あたしの肩にポンと手を置きながらお父さんが声をかけてきた。一度お父さんの顔をみて直ぐに目線を海に戻した。

『あたしって結局なんにも出来ないね。』

『そんなことない、雨は頑張っているじゃないか。』

『あたしが頑張ったって結局大勢の人が傷ついてる。ホムンクルスのくせに役立たずだよね。』

小さく言った言葉を聞いてお父さんは少し辛そうな顔をした。あたしって嫌なヤツ、お父さんがキズつくって分かってこんなこと言うんだから。

罪悪感から手すりに額を置いて俯いた。するとお父さんはあたしを自分の方に抱き寄せた。お父さんの心臓の鼓動が励ましてくれるように思えて、あたしはお父さんに謝った。

『ごめんね、あたし頑張るから。』

お父さんは何も言わず、あたしの髪をクシャクシャにしながら頭を撫でた。弱気になっちゃダメ、しっかりしないとお父さんやシーバーに申し訳ないわ。アレク、直ぐに行くから無事でいてね。
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