雨のあとに
光が消えるとアタシは元の橋の上に座り込んでいた。けれど、さっきと雰囲気が違う。レインとアレクの姿がない。結婚式の観客達がいない。

『みんな…どこ?』

『雨!!』

お父さんが泣きそうな顔でアタシを抱き締めてきた。

『大丈夫か?体は何ともないか?』

『何?どういうこと?アタシどうしたの?レインは?他の人達は?』

アタシの言葉にお父さんは辛そうに首を振った。何なの?何があったの?アタシが理解出来ずにキョロキョロとしていたら、上からゆっくりとマリアが降りてきた。

『おかしいわね。ちゃんとレインと人間達を取り込ませたのに、魔王はまだ目覚めて…ない?』

マリアが不思議そうにアタシを見つめた。

『どういう意味?』

『それはねぇー。』

『黙れ!!それ以上言うな!』

ニヤニヤ笑いながら答えるマリアにお父さんが怒鳴った。

『アハハハ。頭の良いセイシロウならもう気づいたでしょ。そうよ、魔王はアメよ。そして魂の封印も今解いたわ。』

…アタシが…魔王…?混乱しているアタシを見てマリアは嬉しそうに話しを続けた。

『初代国王が掛けた魔王の封印は本当に面倒だったわ。国王の魂に魔王を閉じ込め、さらに賢者三人の血の盟約で二重に封印されてあった。それを解くには一度国王と魔王の魂を分離させる必要があった。』

マリアの言葉を聞いて、お父さんは悔しそうにマリアを睨んだ。

『だから雨とレイン、二人のホムンクルスを作ったんだな。そしてレインに殺させた三人の魔族は賢者の末裔というわけか。』

『そういうこと♪さすがセイシロウね、理解するのが早いわ。それに比べてそこの魔王様はまだ理解出来てないみたい。いいえ、理解したくないのよね?』

呆然とするアタシをお父さんはギュッと抱きしめた。

『賢者の封印は三人殺すだけ、簡単に解けた。でも、国王の封印はそうはいかないのよね。』

マリアは難しいと言いながらニヤリとアタシを見た。嫌な予感を感じながら問いかけた。

『どうするの?』

『それは魔王を愛する人間の魂と、その者を慕う人間達の魂。それを国王の魂と一緒に魔王に捧げるのよ。』

『じ…じゃあレインとアレクは?』

『あんたの中♪』
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