雨のあとに
闇の中を永遠に堕ちて行くような気がした。堕ちている間、あたしは頭の中で沢山の人に逢った。

お父さんや友達、ディーン達やお城の侍女、地球のみんな、ヴァーンのみんな、沢山の人達に出逢った。みんなと出逢ったのは間違いなくあたし自身だった。何の偽りも無い、正真正銘の北浦雨だった。

地球のあたし、ヴァーンのあたし、女王のあたし、魔王のあたし、全部あたしだ。

みんなはどのあたしが好きだったのかな?ディーンはどんなあたしを愛してくれたのかな?色んなあたしがいるけど、どんなあたしでも、あたしがあたしであることは変わらない。

そっか、レインが言ってたことはこういう事だったんだ。魔王もあたしも同じあたしだ。

じゃあ何を恐れているの?みんなとは違うから?人間でも魔族でもないから?それはどうすることもできないじゃない。

ホムンクルスのあたし、魔王のあたしを好きになってもらうしかないじゃない。そうよ、あたしはあたしっていう生き物なんだから、そのあたしを受け入れて貰うしかない!

自分の全てを受け入れた瞬間、辺りに広がる闇は消えて光の世界が広がった。

『やっと、分かったんだ?』

目の前にもう一人のあたしが現れた。

『うん、あなたが魔王でしょ?』

『そう、そしてあなたはあたし。まぁ、マリアはあたしが魔王だけの存在って勘違いしてたみたいだけど。』

『あたし、ずっと自分から逃げてたんだ。バカだね、自分から逃げるなんて。』

『そんなことないよ。前の魔王、最初の魔王は自分から逃げたから破壊することしかできなかった。だから封印されたんだよ。あなたはあたしと向き合った。今度の魔王があなたで本当に良かった。』

あたしはゆっくりと目を閉じて、目蓋を開けた時にはもう一人のあたしはいなくなっていた。いなくなったんじゃない、一つになったんだ。

もう逃げたりしない。どんな事があっても、あたしがあたしであることを否定しない。そう考えるようになったら、体が軽くなった気がした。そして、あたしは目を覚ました。
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