雨のあとに
目が覚めると最初に目に付いたのは、心配そうに覗きこむ緑色の髪をした七歳ぐらいの少年だった。

『あっ!!お母さん、お姉ちゃんが起きたよ。』

少年の声を聞いて、少年と同じ緑色の髪の女性があたしに駆け寄って来た。

『本当っ!?良かったわ、ずっと目を覚まさないから心配してたの。』

少年の隣に座ってあたしの顔を覗きこむ女性に声をかけた。

『あなたは?』

『初めまして、私はメル・クワイス。この子はケント、よろしくね。』

『あたしは雨、北浦雨です。』

『それにしても驚いたわ、三日前に主人が血まみれのあなたを連れて来たのよ。』

『ありがとうございます。でも、どうして助けてくれたの?見ての通りあたしは魔族です。あなた達は人間でしょ?』

『ええ、人間よ。だってここはクセリア、人間の国ですもの。』

『じゃあ何で?』

『怪我人に人間も魔族も関係ない!それが薬師である主人の口癖なの。それよりずっと眠っていたからお腹が空いたでしょ?すぐ食事の用意をするわね。』

人間も魔族も関係ない…か。そんな言葉を言えるなんて、なんて優しい人なんだろうと思った。ご飯を用意しもらっている間にケントと色んな話をした。

ケントのお父さん、ウッドさんが森で倒れているあたしを助けてくれたそうだ。この家は村から離れた場所に立っていて、あたしが倒れていた森の近くにあった。

あれから三日も経ったらしく、刺した所を見ると微かに傷痕が残っているけど完全に塞がっていた。

血まみれになった服はメルさんが始末して、メルさんの服を着せて貰っていた。メルさんの服はあたしには少し大きいけど、袖や裾を捲れば問題なかった。
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