雨のあとに
あたしの体はみるみるうちに回復し、2日程で出歩くことが出来るようになった。そしてリハビリを兼ねてウッドさんの仕事の手伝いをするようになった。

ウッドさんの仕事は薬師で、森で採れた薬草を煎じて薬を作り、それを村に売りに行くことだった。

ウッドさんと共に森に薬草を摘みに出掛け、その日は思いのほか沢山の薬草が採れたので帰る頃には日が落ちていた。

『すっかり暗くなってしまった。アメ、メルとケントが心配しているだろうから急いで帰ろう。』

『そうですね。でもこんなに採れたからきっとメルさんも喜んでくれますよ。』

ウッドさんと早足で帰路に向かっていると、ウッドさんの家の方角から明かりが見えた。あれ?ウッドさんの家の近くに明かりなんてあったっけ?

『ウッドさん、アレ何の光ですか?』

『嫌な予感がする、急ぐぞアメ。』

『えっ!?は、はい!!』

ウッドさんは走り出し、森の出口に急いだ。ウッドさんの足は速く、普通の人間より身体能力が上の筈のあたしでも本気を出しそうになった。

そのお陰で随分早く森を抜けれた。そして、森を抜けた先に見える光景に目を疑ってしまった。森から見えた明かりはメラメラと燃えるウッドさんの家だった。

『何てことだ。メルー!!ケントー!!何処だ!?』

大声で叫ぶウッドさんの声に返事は無かった。

『まさか…まだ家の中に?』

あたしの根拠のない言葉でウッドさんは家に飛び込もうとした。

『ダメです!こんな炎の中に飛び込んだらウッドさんの命が危ないです。』

『しかし、中にメルとケントが居るかもしれないんだ!!』

『あたしに任せてください。』

ウッドさんの前に立って、意識を集中した。あたしの周りに魔力の渦が起こり、ウッドさんは後ろに飛ばされた。ダメ、魔力が強すぎて上手くコントロールできない。それでもどうにか炎を消そうと、水の魔術を使った。

あたしの足元から水が溢れ出し、水の波が家に向かって飛んで行った。一瞬で火は消えたけど、威力が強すぎて家のほとんどが水に流された。

『メル!ケント!』

ウッドさんが崩壊した家のガレキをかけわけ、2人を捜した。あたしも駆け寄ろうとすると後ろからの声に引き止められた。

『さすが魔王、素晴らしい魔力だ。』
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