雨のあとに
振り向くと、そこには手を叩きながら不快な笑みを浮かべるヴィッセルの姿があった。

『まさか…あんたが火を?』

『帰りが遅いからノロシの代わりにな。明るくて直ぐに気付いただろ?』

『ふざけんな!!』

素早く鍵を剣に変え、ヴィッセルに切り掛かったけど、ヴィッセルはさっと剣を避けた。

『おいおい、まさか魔王とも在ろう御方が人間ごときの為に俺と戦うのか?』

『人間ごときって、あんた何様よ!!許さない、絶対にあんたは許さない!』

怒りで魔力が溢れ出す、体にみるみる力が湧いてくる。力もスピードもさっきの何倍にもなり、あたしはドンドンとヴィッセルを追い込んでいった。

『くっ!!どうなっているんだ!?こいつ、魔王の力をコントロールしている?』

『とどめよ!』

手のひらから巨大な炎の塊をヴィッセルに向かって放った。しかし、ヴィッセルはあたしの攻撃を避け、あたしの背後に回った。

『悪いが、まともに貴様とやり合うつもりはない。』

ヴィッセルは右腕をあたしに見せ、ニヤっと笑った。ヴィッセルは右腕から血を流していた。おかしい、あたしはアイツの右腕に傷を付けた覚えがないのに。自分の周りを見ると、いつのまにかあたしは血の魔法陣の中にいた。

『しまった!』

あたしは直ぐに魔法陣から出ようとした。

『遅い!』

ヴィッセルは魔法陣の上に手のひらを叩きつけた。魔法陣は赤黒く光を放ち、あたしの身体に身を裂くような痛みが走った。あたしは痛みで叫び声を上げた。

『手間取らせやがって、お前はもう終わりだ。』

『…くっ…まだ…まだよ。』

抵抗しようと魔術を使おうとした。

『きゃあああああっ!!』

更に酷い痛みが身体に響いた。

『無駄だ、その中でお前が指一歩でも動かせば激痛がお前を襲う。』

痛みが身体を駆けると同時に、身体の奥底から何かが飛び出そうとする感じがした。

『どうだ?身体から魂を引き剥がされる感想は?』

ヴィッセルは腕の傷を治しながら聞いてきた。なる程、あたしの身体から魔王を奪おうって魂胆ね。

そんな事させるもんですか!って言いたいけど、このままじゃ本当に魂を持っていかれちゃう。
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