雨のあとに
ダメよ、魔王の力がこんな奴らの手に渡ったら世界がメチャメチャになっちゃう。

…誰か、助けて!

気持ち悪い、吐きそう。身体の痛みはますます酷くなり、魂がどんどん引き剥がされるのが分かる。

このままじゃ本当に魂が取られちゃう。こんな奴らに魔王を渡したくない、渡しちゃいけない!

けれど、あたしにはどうすることもできず、黙って魂を抜かれるのを見ているだけだった。けれど、だんだん様子がおかしくなってきた。魔法陣から火花が散りだし、少し痛みが弱まった気がした。

『ど、どういうことだ!?止まらない…。あとからあとから…魂が湧き出してくる。』

ヴィッセルが焦りだし、火花はますます大きくなった。

『溢れる…このままでは結界が保たない。』

魔法陣からバリバリっと何かが破れるような音がして次の瞬間、魔法陣が爆発した。

ヴィッセルは森の方に吹き飛ばされ、あたしは近くの木に叩きつけられた。バキッと肋骨の折れる音がし、体中は傷だらけになった。

『はぁ…はぁ、何がどうなってる!?』

森の中から顔から血を流し、左目を押さえながらヴィッセルが出て来た。

『くそっ!!聞いてないぞ、魔王の魂がここまで強大とは。アメ、覚えていろ!左目の借りは必ず返してやる。』

ヴィッセルは以前のレディアのように、片手を地面に掲げ光の魔法陣の中に消えていった。いつの間にか空からポツポツと雨が降ってきた。

『…ハッ!?ウッドさんは!?』

急いでウッドさんに駆け寄ると、ウッドさんの腕の中にはメルさんとケントの姿があった。
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