雨のあとに
そしてあたしの体は井戸を抜けては水と一緒に空中に放り出さた。

ドパーンっと大きな音と共に地面に叩きつけられ、あたしは気を失った。

目を開けた時、あたしはこれは夢だと思った。だってあたしの傍らにはあたしの左手を握りしめたまま眠っているディーンの姿があった。

このまま夢が覚めなければいいのに、そうすれば手から伝わる温もりを感じていられる。ディーンの顔をいつまでも見つめていられる。あたしがディーンの頬に手を当てた、暖かい…。

ゆっくりとディーンが目を開けた。あたしの顔を見るとディーンはガバッと起き上がりあたしを抱きしめ、呟いた。

『良かった…。』

『ディーン、これはあたしの夢の中よね?』

『何故そう思う?』

『だってあなたがあたしの目の前にいる、これはずっとあたしが望んでいたことなの。』

『ならこれは私の夢だ。アメがこの腕の中に戻るのを何度も夢見た。』

夢じゃない…。忘れることのなかったディーンの温もり、あたしはちゃんと感じることができている。あたしはボロボロと泣き出してしまった。

『全く、貴様はいつまでも泣き虫が治らんな。』

ディーンはあたしを包み込むように抱きしめ、あたしが泣き止んだ後もしばらくそのままでいてくれた。戻れたんだ、あたしは本当にマサルドリアに戻ってこれたんだ。
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