雨のあとに
それからディーンから色々話をしてもらった。あたしが戻る前にお父さんとシーバーがマサルドリアに戻ってきて、今の状況を全て聞いたらしい。

もちろん、あたしが魔王であることも。それとディーンの記憶はマリアによってあたしとの思い出だけを封じ込められていたらしく、お父さんがその封印を解いてくれたらしい。

ディーン達はカカロンのことを噂で耳にしていて、その噂は隣国との間に大きな亀裂を作ってしまった。それで一気に人間との関係が悪くなり、国境の周りで冷戦状態になってしまった。

人間達のことや魔王のことを含めて10人の貴族長達が集まり、レオン達と共に会議が連日行われている。今のところ意見は色々別れていてまとまる様子はなかった。

人間と戦うべきだと主張するの人もいれば、人間達と話し合って戦争は回避するべきだと言う意見も出ている。

その話し合いの途中であたしが帰ってきたと言う訳だった。あたしは早速、会議に参加するべく、ディーンと一緒に会議が行われている部屋に向かった。

あたしが部屋に入ると一斉に全員があたしに注目した。レオンとエレット、それにカーダが立ち上がって駆け寄ってくれた。

あたしの体の心配をしてくれたり、マサルドリアから離れたことを咎められたりと色々話し掛けてきたけど、大きなせきばらいで一斉に静かにさせられた。

せきばらいの主は貴族たちの中でも一番古い歴史を持つ血筋の貴族長フォーラム・ケスクライブさんだった。

ここに居る他の貴族長とは面識があったけど、フォーラムさんとだけは直接会うのは初めてだった。せきばらいの後、フォーラムさんは席から立ってあたしの前まで歩いてきた。

『これはこれは。前国王陛下がこのような場所に何の用ですかな?』

フォーラムさんの目からは隠そうともしない敵意を感じ取れた。
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