雨のあとに
マサルドリアでは次々に出てくる問題に慌ただしくなっている。ディーンは国王の問題、レオンとエレットは人間との問題、カーダは同盟国との連絡を取り合って同盟から脱退する国の問題、お父さんとシーバーは魔王やマリアの問題、とみんながそれぞれ頑張ってくれている。

国王のことはディーンの支えもあって、貴族長一人一人と話をしてあたしの存在を認めてもらえるようにした。そしてあたしかケスクライブさんのどちらかが王になるという所まで決定された。

人間達のことは魔王の力を軽く見せつけ、戦う意志を逸らすようにした。力で抑え込むようなやり方はイヤだけど、戦いを避ける方法がこれくらいしか思いつかなかった。

同盟国との事は多少脱退する国も出てきたけど、ほとんどの国が理解してくれてマサルドリアに協力をしてくれていた。

こうやって一つずつ問題を解決することで一歩ずつ平和に近付いている。もっと頑張ろう、みんなを守っていこう。そう思う気持ちがあたしを国王へと近づけているような気がした。

そして国王を決める会議も次を最後に終わることになった。その会議であたしとケスクライブさんが国民の前で演説をし、貴族を含めた国民全員の投票で王を決めることになった。

演説の前日、あたしは緊張して眠れずお城の中庭にある噴水の前で涼んでいた。そこにディーンとメリンダさんが一緒に現れた。

『アメ、そんな所に居たのか。部屋に居ないので探したぞ。』

『ごめんね、それにメリンダさんも来てくれたんですね。』

『ええ、ディーンが陛下はどこだって騒いでたので私も一緒に探していたところですわ。』

『さ、騒いでなどおりません。』

慌てて訂正するディーンをメリンダさんが悪戯に笑った。2人はあたしの隣に座って少し話をした。

『いよいよ明日で決まるな。』

『うん、どんな結果になっても頑張る。』

『陛下なら必ず選ばれますわ。それよりどうしてケスクライブは自分が王になろうとしているのかしら。元々人間嫌いで気性の荒い方だったけど、あそこまで酷くなかったはずですわ。』

『確かに、人間の国と同盟を結ぶ時も多少文句は言ったがアメに逆らうようなことはなかった。』

2人は不思議だと口を合わせて言った。
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