雨のあとに
何言ってるの?こんなのクイズでも何でもないじゃない。それとも何か企んでいるの?マリアの考えが読めず、思った通りに答えた。

『…魔族でしょ。』

『ブーっ!!ハ・ズ・レ。』

『えっ!?それじゃあ人間だって言うの?』

『正解よ。』

『そんなの嘘よ。だってあなたは魔術が使えるじゃない。』

『あら?魔力があるからって魔族とは限らないわ。魔力がない魔族がいるんだから、魔力を持つ人間が居てもおかしくないでしょ?』

魔力を持つ人間?そんなのありえないわ。だって前にカーダから聞いた事があるもの。人間の肉体は魔力に耐える事ができないから、治癒術とかでも魔力を注ぎ過ぎると死んでしまうって。マリアは何でそんな嘘をつくの?分からない。

『信じられないみたいね。ま、信じる信じないは個人の自由だけど。でも、真実よ。あたしは120年前のファランで、普通の人間の間に生まれた。両親はあたしを大事に育ててくれたけど、あたしは普通には育たなかった。二十歳になったあたしの体はどう見ても二十歳には見えない、十歳も満たない子供だった。いくら何でも成長が遅すぎる、周りはあたしの事を毛嫌いし出した。それでも両親はあたしを守ってくれた、見捨てないでくれた。』

両親のことを話すマリアの瞳は優しく、少し哀しい光を放っていた。しかし、マリアの瞳は急に曇り、怒りが現れた。

『けれど、ある日事件が起きた。街の不良共があたしに暴力を加えてきたのよ。今までも多少なりとも危害を加えられたけど、その日の奴らの攻撃は尋常じゃなかったわ。あたしは本気で殺される、そう思った瞬間、体の奥から力が溢れ出すのを感じて、感じるままにその力を放った。不良共を周りの建物ごと蹴散らし、身を守った。それがあたしが初めて魔術を使った瞬間よ。そしてそれを目撃した誰かがファランの王にあたしが魔族だと報告した。それを聞いた王はどうしたと思う?』

泣きそうなマリアの質問にあたしは答える事ができなかった。マリアも期待などしていなくて、一呼吸入れて続けた。

『王はあたしの両親に「娘を殺せ」と命令したのよ。けれど、両親はあたしを殺すことが出来なかった。その結果2人は…お互いの心臓を刺して自殺した。』

あたしは話の残酷さの余り口を抑えて小さな悲鳴を上げた。
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