雨のあとに
ヴィッセルが腰にある剣を抜いて、ディーンの喉元に切っ先を突きつけた。

『やめてっ!!』

『ア…メ…やめ…るんだ。』

『でも…。』

『その扉を…開けてしまったら…取り返しのつかない事に…』

『うるせぇ、黙ってろよ。』

レディアは喋っているディーンのお腹を殴って無理やり黙らせた。

そしてヴィッセルはディーンの髪を引っ張って喉に刃を突きつけ、喉から少し血が流れた。


『早くしろ、さもなければ体から首が離れることになる。』

ヴィッセルは冷たくあたしを睨みながら言った。どうすれば良いの?マリアの言う通りにしたらきっと悪い事になる。でも…ディーンを失う事なんてできない。

あたしは言われるままに扉の錠に触れた。すると錠は簡単に外れ、扉に絡んだ鎖は光の粒になって消えていった。

そして扉が少し開いた瞬間、背筋が凍りつくような悪寒を感じた。

扉の向こうから黒い風が吹き荒れ、完全に扉が開いた。扉から誰かが出て来たけど、風でよく見えない。

ピタッと風が止んで、顔を上げるとそこには綺麗な金の髪に吸い込まれそうな翡翠の瞳に透き通るような白い肌をした美しい少女が立っていた。
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