雨のあとに
頭を失ったマリアの体はユラユラと揺れて、あたしの方に倒れ込んだ。

目の前が茜色に染まり、震える手を見て見ると血がべっとりと付いていた。

『あ…あ…きゃあああ!!』

恐怖で耳に届く叫び声が他人のモノだと思った。そして、クリスはその様子をまるでコメディ映画のワンシーンを見ているかのように笑っていた。

レディアとヴィッセルも呆然として、何もせずにただただ立ち尽くしている。ディーンだけがその場で行動し、マリアの体をはねのけて叫び続けるあたしを抱きしめた。

『アメ、アメ!しっかりしろ。大丈夫だから、私の目を見ろ!』

ジッとあたしを見つめる優しい瞳に落ち着きを取り戻し、ディーンにすがるように抱きついた。

あたし達の様子をクリスはつまらなそうに見つめた後、レディア達の方を向いて歩き出した。クリスは二人の前で立ち止まり、ニッコリと笑った。

『あれー?さっきの人と同じ格好だね?友達?』

ヴィッセルが震えながら答えようとした。

『わ、私達は…』

『一緒に死んでみる?』

クリスは手のひらをヴィッセルのお腹に押し付けた。すると、ヴィッセルの体はもの凄い勢いで壁にめり込み、ピクリとも動かなくなった。

『うわあああっ!!』

レディアが余りの恐怖に耐えきれず、クリスを攻撃し出した。何発何十発とクリスに魔術をぶつけて煙でクリスの姿は見えなくなった。
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