雨のあとに
お城の中は怖いほど静かで、まるであたしとディーンの二人だけのように思えた。そして、頭の中に最悪のイメージが浮かんでくる。

みんながクリスの手によって消されてしまっているかもしれない…。お城の中に入るドアを開けようとするけど、開く勇気が出てこない。そんなあたしをディーンが心配そうに顔を覗き込む。

『気分が悪いのか？顔が真っ青だぞ。』

あたしは必死で平気な顔を作った。

『大丈夫、何でもないよ。』

これ以上ディーンの重荷になりたくない。手に力を込めてドアノブを回した。すると、あたしがドアを開ける前にドアが勢いよく開いてあたしはドアに思いっきりオデコをぶつけ、ディーンの胸に倒れ込んだ。

『痛ったーい!!』

『大丈夫か？アメ。』

ディーンに肩を支えてもらいながら立ち上がって、開いたドアの方を見た。そこには驚いた顔をしたお父さんが呆然と立っていた。

『良かった、二人とも無事だったのか。』

お父さんはホッと胸をなで下ろし、あたし達をお城の中に入らせた。話を聞くと、お父さんが朝目を覚ましたら、あたしの魔力を感じ取れなかったから心配してお城のみんなと探してくれていたという事だった。

『雨とディーン君が一緒に居なくなるもんだから、もしかしたら駆け落ちでもしたのかと思ったよ。』

からかう様に言ってくるお父さんに、あたし達は顔を真っ赤にして否定した。その様子を嬉しそうにお父さんは微笑んでくれていた。

そしてあたし達が無事だという知らせがお城中に伝わり、王座の間にみんな集まった。

まずあたしは心配掛けてしまった事をみんなに謝り、そしてクリスの事を話した。みんなは驚き、動揺を隠せずざわめき、クリスについて話し出した。

『本当に実在したのか!?』

『目的は何なの？』

『またマサルドリアが襲われるのか？』

色々とクリスの話をしている中でお父さんだけは別のことを考えていた。

『マリアはどうしたんだ？』

『あ…それは…。』

直ぐに答える事が出来ず、お父さんから顔を反らした。
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