雨のあとに
みんながあたしの様子に不安を感じ、マリアについて一斉に聞いてくる。

『奴はやはりクリスと手を組んだのですか?』

『陛下!やはり奴らはこの国を潰す気なのですか?』

『今、奴らはどこに?』

マリアの事を考えると、あの時の惨劇が思い出される。あの時の感触、匂い、音、全てが甦ってくる。

『陛下?』

『陛下、答えてください。』

『陛下っ!!』

止めて、お願い。思い出させないで。自然にこの場から逃げようと、体が後ずさる。すると、ディーンがあたしを背中に隠し、大きな声で叫んだ。

『静まれっ!!』

一瞬で全員が口を閉じて、辺りは静まり返った。

『マリアは死んだ、クリスによって殺されたのだ。』

ディーンはあたしの変わりに事実をみんなに伝えてくれた。それを聞いてみんなはますます落ち込んで、更に恐怖を抱いてしまった。

そんな中、レオンとエレット、カーダ、それにお父さんの4人はあたしの周りに集まってくれた。

『大丈夫ですか?』

『皆を悪く思うな、恐怖で気を使えないんだ。』

『申し訳ありません、私がしっかりしていれば陛下の気分を害する事などなかったのに。』

『雨、ごめんよ。私のせいで嫌な思いをさせてしまった。』

4人は心配そうにあたしを見つめる。

『ごめんね、心配かけちゃって。でも、もう大丈夫よ。』

うん、平気。あたしは独りじゃない、みんなが居るもの。あたしを理解して、励ましてくれる仲間がいる。

ディーンの手を握りしめ、声を出さずに「ありがとう」と言った。ディーンは優しく微笑んで、手を握り返した。そしてディーンはみんなに声を掛けて、これからの事についてどうするか話し合った。
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