雨のあとに
あたし達が話し合っている所に、フォーラムさんが家来の人を数人引き連れて部屋に乗り込んで来た。

『アメ殿がお戻りになったと耳にしたのですが、王を決めるという大事な会議から逃げ出した方がよく城に戻って来られましたな。』

フォーラムさんはあからさまな態度であたしに語りかけてくる。

『フォーラムさん、今はそんな事を言い合っている場合じゃないわ。クリスが…凶悪な魔族の封印が解けてしまったの。』

フォーラムさんにクリスの事やそれまでのいきさつを簡単に説明した。フォーラムさんは一瞬動揺を見せたみたいだけど、直ぐに平静な態度になった。

『あなたはクリス殿を悪人のようにおっしゃっているが、本当にそうなのでしょうか?』

『どういう意味?』

『クリス殿は我々の味方ではないのですか、と言っているのですよ。』

『なっ!?そんな訳ないじゃない!クリスはマリアを…人を殺したのよ。』

フォーラムさんの有り得ない意見に興奮して、怒りまで感じてしまった。

『まあ落ち着いてください。マリアは我々マサルドリアに害を与える存在でした、違いますか?そしてあなたやディーン殿には一切危害を加えなかった、それは我々の味方だと捉える事ができませんか?』

フォーラムさんの言っている事は間違いではなかった。けれど、クリスは絶対に味方なんかじゃない。あの子は人を殺したのに笑ってた、それにクリスからは邪悪ものしか感じられなかった。

『味方なんかじゃない、絶対に味方なんかじゃない!』

『何故そう思われるのですか?何か証明できる物でもあるのですか?』

『それは…無い。けど、クリスは危険な存在なの。そう感じたのよ。』

フォーラムさんは静かに笑った。

『まるで子供の言い訳ですな。そのような意見が通ると思っているのですか?』

フォーラムさんの言葉でクリスが正当化され、信じる人も出始めた。あたしは必死でクリスがどんなに危険な存在かをフォーラムさんに訴えた。ディーン達もみんなに説明してくれた。

次の瞬間、あたしは恐ろしい寒気を感じた。気分は悪くなり、汗が出て心臓もバクバクする。この感じはまさか…。
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