雨のあとに
恐ろしい気配を感じた後、直ぐに兵士が部屋に飛び込んで来た。

『報告いたします!人間達が集まる国境の方角から煙が見え、確認してみると人間達の軍隊が次々に潰れているようです!』

兵士の言葉に周りがざわめいた。あたしはそれがクリスの仕業としか思えず、直ぐに国境に向かおうとして駆け出しだ。すると、フォーラムさんに呼び止められた。

『どちらに行かれるのですか?まさかとは思いますが、人間を助けに?』

『その通りよ!』

フォーラムさんの顔を見てはっきりと言ってやった。すると再び周りがざわめき、みんながあたしを変な目で見つめる。

『陛下、本気ですか?』

『人間は私たちを攻撃しようとしてたんですよ!』

『このまま奴らが全滅するのを待ってはいかがですか?』

次々に酷い言葉が飛び交っていく。あたしは震える声でみんなに聞いた。

『みんなはそれで良いの?自分たちが良かったらそれで良いの?』

みんなの答えはあたしが期待した言葉とは違っていた。

『当たり前じゃないですか。』

『昔から魔族と人間は憎み合って来ました。消えてくれれば言うこと無しですよ。』

みんなの反応にフォーラムさんは嬉しそうに笑った。

『人間を助けるということは、あなたは魔族を裏切るということですか?』

それを聞いて、みんながあたしに批判的な言葉をぶつけてきた。ディーン達がそれを止めさせようとしてくれたけど、止まることはなかった。

やっぱり魔族と人間は仲良くできないのかな?ううん、そんな事ない。シーバーが人間を愛したように、アレクがあたしを好きになってくれたように、お互いを愛し合う気持ちは存在する。

今は無理でもいつかきっと分かり合える日が訪れる。その日が来るように、あたしはこの世界をクリスから守りたい。人間も魔族も全ての命に平和が訪れるように。

あたしは最後にみんなに笑顔を向けた。辺りが静かになった。みんながそれをどう受け止めてくれたかは分からないけど、みんなにあたしの気持ちが伝わることを願った。

そしてみんなに背を向けて部屋を出た。
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