雨のあとに
国境の門の前まで来た。門の向こう側は見えないけれど、銃を発砲する音や爆発音などが聞こえてくる。

昔、テレビで見た戦争映画を思い出した。けれどこの迫力はテレビの音量を目一杯上げて聞いても適わないと思う。

レオンとシーバーが門を開ける準備を始める。あたし達も馬から降りて、門が開くのを待った。

人間達の悲鳴が耳に届いて来る度に落ち着きを無くしてしまう。これは早く門が開けば良いという事じゃないと思う、むしろ開かなければ良いと思っているのかもしれない。

門がゆっくりと開き始め、隙間から砂埃が舞い込んで来た。完全に開いた門から見えた景色は地獄のような光景だった。人間達の死体が山のように積み上げられ、その周りにも瀕死の人や大怪我をした人間が倒れている。あらゆる人間達の兵器は破壊され煙を上げ、辺りは火の海になっていた。

煙の向こうでまだ人間達とクリスの戦いは続いた。ううん違う、これは戦いなんかじゃない虐殺よ。

人間は銃でクリスを攻撃しているけど、クリスは全ての銃弾を身体に届く前に防いでいた。人間達はすかさず丸い戦車のような機械を数十台で一斉にクリス目掛けてバズーカ砲を発射した。全弾命中し、クリスがいた所には大きな穴が空いた。

人間達は歓声を上げて喜んでいた。そして煙が風で吹き飛び、クリスの姿が見えた。クリスは空中に浮いて、服に付いた土を払っている。

平然としているクリスの姿を見た人間達の歓声は悲鳴と変わる。クリスは人間達の悲鳴をまるで美しい音楽を聞いているような嬉しそうな顔をしていた。そして、クリスは人間達に手をかざし手を振った。
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