雨のあとに
脳裏にマリア達の惨い姿が浮かんだ。嫌、あんな光景を見たくない!

『やめてーーー!!』

あたしの声がクリスに届いて、クリスの手が止まり顔がこっちを向いた。

『あれ〜?アメちゃん?アメちゃんだ!』

クリスは人間達に向けた腕を降ろして近づいて来た。

『クリス、これ以上人間を殺さないで。』

その言葉にクリスはキョトンとした。

『どうして?』

『どうして?って…人を傷つけないのは当たり前じゃない。』

『ふ〜ん、何で人間を庇うの?』

『…人間とか魔族とかそんなこと関係ない。あなたこそ何で人間を襲うの?この人達はあなたと関係ないじゃない。』

『だって楽しいんだもん。』

あたしは自分の耳を疑った。

『今…何て言ったの?』

『だから楽しいから殺すの。』

『そんな理由で殺したの?』

『そうだよ、ココが終わったらマサルドリアね。魔族は人間より丈夫だから楽しみ。』

ウソでしょ?楽しいから殺す?そんなバカな話ないわよ。そうか、クリスにとってコレは遊びなんだわ。自分が悪いことをしているなんて思ってもいないんだ。

心のどこかでクリスとは話し合いで解決できるかもって期待していた。けど、それは無理みたいね。そしてその絶望があたしに覚悟を与えた。

『クリス、あなたを殺す。』
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