雨のあとに
さっきのマリアとの戦いでかなりの魔力を使ってしまい、体力も少なくなってしまった。

けれど、背後から聴こえるみんなの声があたしの背中を押し上げてくれる、「頑張れ」って言ってくれている気がする。息急き切り、マリアの元に走った。

マリアは少し離れた岩山の上で泥人形と戦うみんなの姿をジッと見つめていた。あたしはボーっとみんなを見つめるマリアに息を詰まらせながらも声をかけた。

『何を…見てるの?は…早く…決着を…つけましょ。』

マリアは不思議そうに問いかけてきた。

『どうして人間と魔族が一緒に戦っているの?』

『どうしてって、そんなのあなたから大切なモノを守るために決まってるじゃない。』

『大切なモノって何?』

『それは…人それぞれ違うけど家族や友人、恋人とかだったり、地位や名誉、お金って言う人も居るかもしれないわ。』

『なーんだ、結局みんな自分の為じゃない。正義とか愛とか色々御託並べても全部自分の為なんでしょ?』

『そうよ、それの何が悪いの?あたしが誰も傷ついて欲しくないから戦うの、みんなが大切だから戦うの。それは他の誰の為でもない、自分の為よ。』

『だったら守ってみせてよ。』

マリアはあたしに向けて手をかざし、魔力の塊をぶつけてきた。あたしはそれを避けることができずに岩山から吹き飛ばされて地面に叩きつけられた。

マリアはあたしを追いかけるようにゆっくりとあたしの前に降りてきた。

『どうしたの?エラそうな事を言ったわりには弱いのね。アメちゃんの魂はマリアが作ったんだからマリアの魔力に勝てる訳ないじゃん。』

マリアはクスクスと笑い、更に攻撃を加えてきた。あたしは地面に這いつくばり、転がりながらマリアの攻撃を避けた。

『アハハハっ!!面白い、アメちゃんが芋虫みたいに逃げ回ってる。ウフフ、綺麗な顔が泥だらけよ。』

悔しいっ!!魔王の力でもマリアに歯が立たない。このままじゃ本当にマリアに全てを破壊されちゃう。

そんなのイヤよ。力が欲しい、化け物って呼ばれてもかまわない、マリアを倒す力が欲しい!

悔し涙を流しながら強く念じるとあたしは再びあの世界に呼ばれた。レインと魔王のあたしと出会った場所に。
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