雨のあとに
全員があたしの「来るな」という言葉に困惑していた。あたしは一人一人と目を合わせたけど、ほとんどが状況を理解できていない目をしている。だけど、一人だけがあたしの身体から溢れる光の粒を見て、全てを理解していた。お父さんだ。

『雨…まさか…。』

お父さんの唇が震えて声も震えていた。震えるお父さんにあたしは笑いかけた。多分、あたしは上手くできてなくて、少し困った笑顔になっていたと思う。そしてお父さんはその場に崩れるように膝をついて叫んだ。

『すまない、雨。私は自分の罪を全てお前に背負わせてしまった。なのに私は…お前を…。』

お父さんの顔を覆った手からは、大粒の涙が零れ落ちていた。あたしは直ぐにお父さんに駆け寄り、お父さんの肩を支えた。

『良いのよ、お父さん。これで良かったの。全部あたしが望んだことなんだから、お父さんは何も悪くない。』

『しかし、お前だけがこんな目に会うなんて。』

お父さんが自分を攻め立てているところに、全く状況が掴めないエレットが我慢しきれず声を挟んだ。

『何がどうなっているんだ?クリスは倒したんだろ?だったら全て終わったんじゃないか。なのに何でセイシロウは泣いているんだ?』

それはあたしとお父さん以外、その場にいる全員の気持ちでもあった。ディーンもあたしの瞳をじっと見つめ、ディーンの瞳は話して欲しいと訴えかけてくる。あたしは口を開こうとすると、お父さんはその口を塞いだ。

『私から話そう、雨にこれ以上辛い思いをさせられない。』

お父さんは涙を拭って、膝の埃を払いながらゆっくりと立ち上がった。

『みんな、落ち着いて聞いて欲しい。雨は間もなく…消えてなくなる。』
全員がカミナリに打たれたように、大きなショックを受けていた。あたしは絶望を目の当たりしたようなディーンの瞳から、辛い現実から目をそらした。
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