雨のあとに
その後カーダさんが付け加えるように言う。

『まあ落ち着いて、今すぐって訳ではないのですから。』

『今すぐじゃなくても将来は結婚するんでしょ?婚約者ってこんな風に決めるものじゃないよ。レオン達はいいの?よく知らないあたしと結婚していいの?あたしはこういう事って大切な事だと思う。』

レオンは何も答えてくれなくて、ディーンさんとエレットも黙ったままだった。あたしは結婚って幸せなものだと思ってたのに、こんなに悲しくなるなんて。

なんかもう怒ったらいいのか哀しんだらいいのかもわからない、ただそこに立っていることしかできなかった。カーダさんはとにかく部屋で休むようにと言って部屋まで連れて行ってくれた。

ベッドに横になって、何度寝返りを打っても頭の中には逃げたいの一言が渦巻いている。そうだ、逃げよう。逃げちゃえばいいのよ、元々あたしは女王になんかなる気ないし別にあたしなんか居ても居なくても同じだって。

あたしはベッドから飛び起きて部屋から出ようとしたら、ふっと鏡に映る自分が見えた。黄色のフリースたっぷりのドレスは目立つよね。とりあえず背丈が似ているエレットの部屋に忍び込み、私服を一着もらって着替えた。

あとはこの髪ね、黒髪はこの世界じゃ目立つんだよね。どうしようかと周りを見回すと、フード付きのマントがあった。コレ貰っちゃお、あたしは早速被ってみた。うん、バッチリ!髪のついでに顔も隠れて一石二鳥だ。あたしは急いで部屋から出て、出口の門まで走った。
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