雨のあとに
あたしを乗せた荷台は結構なスピードで走り出し、降りることもできなくなった。でもこれで良かったのかもしれない。別に当てがあるわけでもない。今はお城から離れれば、後の事は止まった時に降りれば良い。

けれど、そんな甘い考えが通るわけも無かった。荷台は止まることなく目的地に到着してしまい、ますます窮地に立たされた。もし、荷物を降ろしに来られたら一巻の終わりだ。荷台が止まり、周りの様子を見ようと顔を出したら、驚く光景がが目に映った。家々が燃え上がり、大勢の人が殺されている。そんな…戦争は終わったんじゃないの?

とにかく荷台を降りてその場から離れようした。けれど、不意に聞こえてきたディーンさんの声で足が止まった。

『人間共を逃がすな!捕まえてどこの国の者か吐かせろ。抵抗するやつは殺せ、人質は1人残っていれば十分だ。』

何それ?違う、今はそんな事より大事なことがあるんじゃないの?そう思ったら、口を出さずに居られなかった。

『ちょっと待ってください、今は敵の事より怪我した人を助けるのが先決じゃないですか?』

そう言ってフードを脱いだ、そしてあたしに気づいたディーンさんが声を上げた。

『貴様っ!?何故ここにいる?』

『そんな事よりも早くケガした人を助けないと。』

『それでは敵を逃がしてしまう。逃がしてしまえば敵の正体が分からん。』

『何言ってるのっ!?このままじゃあの人達が死んでしまうわ!』

『救助は後から来るレオンらの隊に任せておけば良い。』

そう言ってディーンさんは敵を追いかけて行った。何で?人を助けるより敵を倒す方が重要なの?あたしはただ何も出来ずにそこに存在するだけだった。そして駆けつけたレオンとエレットの隊が魔法で火を消して怪我人の救助が始まった。

とにかく無我夢中で手伝った。すると目の前に重傷の10才にも満たない男の子が運ばれてきた。
< 27 / 201 >

この作品をシェア

pagetop