雨のあとに
『アメにこんなこと言うのはどうかと思うけど、前の国王つまり俺達の父上はあまり良い王とは言えなかった。昔の戦争を始めたのは実は父上なんだ。父上は国王だったから誰も逆らうことなんてできなかった、母上さえもね。前に貴族は魔力が強いって言ったよね?父上はそれさえも戦争に利用しようと俺たちを戦いの道具としか考えてなかった。』

『そんなのヒドい!!レオン達が可哀想だよ。』

レオンはニコッと笑い話を続けた。

『それで魔力のなかったディーンは父上から酷い扱いをされた、役立たずと言われ続けて必要以上に痛めつけられた。母上は何度も父上を止めたが、そのたび母上が咎められて止められなかった。俺は運良く魔力に恵まれ父上に気に入られたが優しくされた記憶はないな。だけど一番辛かったのは母上とエレットだった。』

『何で?メリンダさんは分かるけど、エレットもちゃんと魔力があるからレオンと同じだったんじゃないの?』

『俺たちには俺とエレットの間にもう一人兄弟がいたんだ、妹がね。だが戦争の道具に女はいらないと言った父上は産まれて間もない妹を城から追い出した、魔族を売り買いをしている商人に売ったんだ。今は生きているかさえを分からない。母上はそれを酷く悲しまれ二度と同じことを繰り返さないように、ある大きな嘘をつくことにした。』

『嘘ってまさか・・・』

口を抑えながら驚くあたしに、レオンは頷いた。

『母上はエレットを男として育て、父上はエレットを俺たちと同じように毎日剣と魔術の修行をさせた。エレットにはどんなに辛かったか、そんなエレットを母上はどんな思いで見ていたか。』
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