雨のあとに
誰かな?こんな時間にお客さんなんて。お父さんは自分が見て来ると立ち上がった。

『誰かと思ったら静(シズカ)じゃないか、雨悪いけど玄関まで行ってドアを開けてやってくれ。』

今度はあたしが立ち上がって玄関まで走った。玄関を開けると静さんが抱きついてきた。静さんはとても綺麗な人で今日も高そうなドレスを見事に着こなしている。本名は北浦静と言ってお父さんの弟だ、男なのにドレスを着ているのは静さんがオカマだからであたしがお父さんがゲイかもって思ってしまったのはこの人が原因でもあるかな。

『雨ちゃん久しぶり〜、元気だった?相変わらず可愛いわね!』

『静さんも相変わらず派手だね、パーティーでもあったの?』

『そう、お客様のバースデーパーティー。』

静さんは会員制の高級クラブで女の人として働いているけど、お店のオーナー以外正体は知らない。これだけ綺麗だったら誰も気づかないだろうけど。静さんはお父さんに用事があって来たらしく、あたし達はリビングに一緒に戻った。

『兄さん元気そうね、良かった。』

『で?どういう用事で来たんだ?』

お父さんはムスッとして静さんに言った。

『何よ〜、何怒ってんの?あっ、もしかして雨ちゃんと2人っきりの時間邪魔したから?兄さんも相変わらずね。そうそう、今日はコレを持って来てあげたの。』

静さんはバックから金の印章が押された白い封筒を取り出してお父さんに渡し、お父さんはそれを受け取って直ぐに中身を確認した。

『なんだ毎年井川さんが開いているダンスパーティーの招待状じゃないか、もうそんな季節になったのか。』

井川さんはお父さんの友達で政治家をしている人なの。パーティーは大きな船の上で色んな人が呼ばれて有名人も来るんだって。けれど、行くのはいつもお父さんだけ。あたしにはまだ早いと言って連れて行ってもらえなかった。けど今年は絶対に連れて行ってもらうんだから。
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