雨のあとに
ムカつくムカつくムカつく!枕を何回殴ってもイライラが治まらずにベッドのシーツもメチャメチャになった。しばらくして窓辺に立って月明かりに照らされながら外を眺めていると扉を叩く音がした。

『どうぞ。』

誰かと思ったら、ディーンだ。あたしはちょっとディーンの顔を見ただけで、すぐ窓の方に顔を戻した。

『何か御用ですか?』

『先ほどは悪かった、くだらんことを言ってしまった。』

『そうですか、お気になさらないでください。全っ然気にしてないから。』

『うっ・・・、奴と貴様の仲を疑っていたわけではない。ただ少し・・・妬いてしまった。』

ディーンの顔を見ると、かなり恥ずかしがっていて耳まで赤くなってる。こんなディーンを見るのは初めて。いつもどこか余裕を感じる威厳みたいのがなくて、強面で照れる姿がなんか可愛い。そんなディーンを見てつい笑ってしまった。

『な、何がおかしい?』

『だって、ディーンらしくないんだもん。ヤキモチ妬くなんておかしいよ。』

『おかしくなどない。婚約者が姿を消し、心配していれば駆け落ちをした者と一緒に帰ってきたのだ疑って当然だろう。』

『そいうもん?ずっと彼氏がいなかったからそういうのよく分かんないだよね。』

『カレシとはなんだ?』

『恋人って意味。』

『そうか、私のことを恋人だと思ってくれているのか。』

『当たり前でしょ。婚約者なんだし、それにキスだってしたじゃない。それとも誰にでもする尻軽だと思ってんの?』

『いや、思ってはいない。だが・・・。』

『だけど何?』

『一度も好きだと言われたことがないのでな。婚約した時も少々強引すぎたような気もする。』

『確かに。けど、好きでもない人といつまでも婚約なんてしてるわけないじゃない。言わないと分かんないなら言ってあげる。いい?一度しか言わないからよく聞きなさいよ。・・・好きよ、ディーン。』

恥ずかしく死にそう、こんなに恥ずかしいもんなの?ディーンの顔がまともに見られない。
< 80 / 201 >

この作品をシェア

pagetop