雨のあとに
トルパギまでの旅の途中、シーバーと色々話した。犯人を見つける為に被害者の共通点を探したり、犯人の目的を想像したりしたけど答えを見つけることはできなかった。村に立ち寄る時は身分を隠して旅をしている兄妹と偽った。

『ディーン怒ってるかな?』

『黙って出てきたことを後悔しているのですか?』

『だって言ったら絶対止められるもの。』

『きっと心配なされているでしょうが怒ってはいないと思いますよ。陛下のお気持ちも分かっているでしょう。』

『そうかな?そう・・・だよね。』

『はい、もう遅いですし明日も長い道のりですからもうお休みになられてください。』

『うん、ありがとう。お休み、シーバー。』

あたしは疲れていたせいだったのかすぐに眠ってしまった。そしてまた夢を見た。

だけど、いつもと違う夢だった。辺り一面に黒と白の薔薇が咲いていて、目の前には大きな銀色に輝く扉があった。近づいて扉に触れてみると扉の向こうから声が聞こえた。

『そこに誰かいるの?』

『うん、いるよ。』

不思議とずっと会えなかった人に会えたようなそんな気持ちなって、もっとこの子のことが知りたいと思った。

『ねぇ、あなた名前は?性別は?年はいくつ?』

『そんな、急に聞かれても。あなたは?』

『あたし?あたしは北浦雨、15歳の女の子。』

『あたしも15歳の女の子、名前は・・・ない。』

『ナイ?ナイちゃんって言うの?』

『違う、名前がないっていう意味。』

『そんな・・・可哀想。だったらあたしが考えてあげる!えっと〜、どんなのがいいかな?』

『あたしもアメがいい。』

『えー、あたしと一緒なのは不便だと思うな。』

『ごめんなさい・・・。』

『そんな、謝らないで。だったらレインってのはどう?あたしの世界で雨の違う呼び方なんだ。』

『レイン・・・。』

『ダメ?気に入らなかった違うのを考えるけど。』

『ううん、スゴく嬉しい。呼んでアメ、あたしの名前を呼んで。』
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