異界見聞録
「私のことは蒼冥と呼んで下さって構いませんので。焔?拾ったものはきちんと面倒見て下さいね?」
私はペットか!
ムカつくぅううう!
けど言えないぃいい!
「あぁ…そうそう。天弧族と従者たちが待っているので早くきて下さいね。」
それだけ言うと、さっさと行ってしまった。
ちょっ!ちょっと!
急に2人きりにしないでよ!
「……清弧の奴が何故。」
「え?」
「何でもない。麻由が気にすることでは無い。」
たぶん自分では気付いてない…のよね?
これは無意識なのよね?
ふわりと浮かべた焔の柔らかい微笑に、自然と顔が赤くなるのを感じる。
「っ…そ、そうですか。」
顔が赤いのを気付かれたくなくて視線を下げた。
「?どうした。具合でも悪いか。」
「へ、平気…です。」
「…そうか。では皆(みな)が待っている。」
そう言って、歩を再開した。
私は一体どうなってしまうのだろう…
何のために、この世界に来たのだろう…
私は帰れるのだろうか…
そんな不安を抱えながら、手を引かれ目の前の背中を見つめるしかなかった。
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