異界見聞録

「私のことは蒼冥と呼んで下さって構いませんので。焔?拾ったものはきちんと面倒見て下さいね?」

私はペットか!
ムカつくぅううう!
けど言えないぃいい!

「あぁ…そうそう。天弧族と従者たちが待っているので早くきて下さいね。」

それだけ言うと、さっさと行ってしまった。

ちょっ!ちょっと!
急に2人きりにしないでよ!

「……清弧の奴が何故。」

「え?」

「何でもない。麻由が気にすることでは無い。」
たぶん自分では気付いてない…のよね?
これは無意識なのよね?

ふわりと浮かべた焔の柔らかい微笑に、自然と顔が赤くなるのを感じる。

「っ…そ、そうですか。」

顔が赤いのを気付かれたくなくて視線を下げた。

「?どうした。具合でも悪いか。」

「へ、平気…です。」

「…そうか。では皆(みな)が待っている。」


そう言って、歩を再開した。

私は一体どうなってしまうのだろう…
何のために、この世界に来たのだろう…
私は帰れるのだろうか…


そんな不安を抱えながら、手を引かれ目の前の背中を見つめるしかなかった。







.
< 5 / 15 >

この作品をシェア

pagetop