ひとり<ふたり
マンションの家具を売って、完全に紅ん家に居住を移すまでに1週間。



久しぶりに父親に電話をする…。



緊張するけど俺はもう決めた。



「めずらしいな」

「ご無沙汰してます。家を引き払ってください」

「母さんが言ってた女のとこにでも転がり込むつもりか?」

「そうですよ。あちらの家族にはよくしてもらってますし」

「今まで通り、学費と生活費は振り込む。カードも好きなだけ使え。気が向いたら帰って来い」

「帰りませんよ。僕の居場所はもうちゃんとある」

「生意気な…。じゃあな」



久しぶりの電話もすぐに終わる。



俺なんてどうでもいいらしい。



必死に勉強したおかげで勉強の要領もいい。



跡取りには最高の存在の俺…。



そろそろ見切りをつける時だ。



俺は明るく生活したい。



「お父さんはなんて?」

「学費と生活費は出すって。あっけないね~。少しは止められるかと思ったのに…」



でもこれでいい。



父親と母親の腕を求めなくなれる…。



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