ひとり<ふたり
その後の話しは楽しかった。



急にバスターのCDを出してサインくれって言われたり、今の奥さんの愚痴を聞かされたり。



会ったことがないリンの妹の話しとか、終始話題は絶えなかった。



「そろそろ帰りましょうか。奥さんが心配しますよ」

「まだいいじゃないか…」

「これ以上株は下げたくないんで素直に返却します」

「悪いな…本当に…」



前に会った時にはかなり口うるさそうな人だと思った。



リンもお父さんの奥さんのことは好いてないから…。



ご馳走になったお礼を言ったら『林太郎を頼みます』と頭を下げられた。



その姿を見たリンは今日いちばんの笑顔でお父さんを見送ってた。



「よかったね、リン」

「うん。最初は緊張して手が震えてた…。拒否られるのが怖くてさ、言葉選ぶのに必死」

「それで壁が…」



手を繋いで家に帰る途中、やっぱりお母さんの実家に行きたいと言っていたリン。



リンの中では当たり前のようにあたしも同行することになってて…。



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