ひとり<ふたり
両家の反対を押し退けて無理矢理結婚した俺の両親。



父方の家と母方の家は最後までいがみ合ってた。



だから俺もここに来たのは生まれて3回目くらい。



それでも顔は忘れられてない…。



「大きくなって…」



目を潤ませて近付いて来るおばあちゃんに泣きそうになった。



連絡先すらわからなくて年賀状も手紙も送ったことがなかったのに…。



俺を孫だと思っててくれてる…。



「おばあちゃん…」

「よく来たねぇ!!10年ぶりかね!?」

「はい…。あのっ…」

「祥子ならあそこの部屋にいるから。会ってくるといい」



行ったら運命が決まる。



突っぱねられたらもう二度と会わないと決めて来た。



紅がおばあちゃんに自己紹介をしてる中、俺の心音は周りに聞こえてしまうんじゃないかと思うくらい大きくなった。



母屋から少し離れた場所にある古ぼけた小さな建物は冷たい印象。



あそこにいる…。



ゆっくりと近づき、ドアを開けた。



< 362 / 516 >

この作品をシェア

pagetop