ひとり<ふたり
それは予想もしてなかった一言…。



俺をくれ?



「あなたが手放したリンを、あたしがもらいます」

「あなたは…前に会った…」

「安西 紅といいます。いらないんですよね?リンのこと」



お前はどうしてそんなこと…。



さすが性格ブスと呼ばれただけのことはあると実感した。



「いらないなんて…」

「だったらリンにあなたの気持ちをわかってもらってよ。あたしは同情なんてしませんから」



そう言って母屋の方に歩いて行ってしまった。



底が知れない女、紅…。



この場をどう取り繕えばいいのか…。



「お茶でもいれましょうか…」



母さんが暮らす部屋に足を踏み入れた。



俺は覚悟を決めたんだ。



泣いても笑っても…ちゃんとケリをつけよう。



母さんが出してくれた紅茶は懐かしい匂いがした。



まだ好きなんだ、ダージリン…。



「まだお砂糖いっぱいいれるの?」

「あっ、はい…」

「変わらないわね」



違う…母さんが…。



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