美穂と千夏
「いやいやいや、冗談は胸のでかさだけにしてよ。おかしいおかしい。だいたい千夏、彼氏とか普通にいたじゃんか」

「ああ、小川君?向こうが告ってきたからねえ。顔は良かったよ顔は。でも小川君と付き合って改めて思ったの、私は美穂が好きだって。愛してるんだって」

 自分の口の中が、一気に乾燥したのが分かった。千夏の表情が、本当に真剣なものだったからだ。いつもへらへらしてる千夏が、あまり見せない真剣な顔。真っ直ぐに、その大きな二重の目で私を見つめてくるものだから、私の心が読まれそうな気がした。

 緊張しながらも、頭のどこか片隅は冷静で、「ああ、これがレズってやつか」と思った。私の購読してるファッション雑誌の特集で「女同士の恋愛事情」とかいう華やかな記事があったのを思い出した。ほとんど読み飛ばしていた自分を後悔した。もしかしたら、「ある日、友達に告白されたらどうする!」的なアドバイスが載っていたかもしれないのに。

 ……なんて、言えばいいんだ。
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