美穂と千夏
現れたのは、姉の真帆だった。手に杏仁豆腐を持っている。
「お姉ちゃん……なんでいるの。バイトは?」
「いちゃ悪いかよ。バイトはこれから」
ぱくぱくと杏仁豆腐を食べながら、真帆は階段を上っていった。
美穂は台所まで何とか歩き、冷蔵庫の中からキンキンに冷えた杏仁豆腐を取り出した。ラップをガラスの容器からはがしてゴミ箱に捨て、スプーンを棚から取り出し、2階にある自室に向かった。
部屋に入ると、愛用のハートの形をしたテーブルに杏仁豆腐を置き、エアコンのスイッチを入れる。ピッ、という音がした数秒後に、心地よい風が部屋を包む。
「あー…きもちいい……」
この瞬間がたまらなく好きだ。汗でべとべとした体が、一気に冷えていく。
制服のシャツだけ脱いでベッドに放り投げる。こうすると皺が付くから、と言って母は嫌がるが、その母は今は会社で仕事中だ。もうしばらくは帰ってこないだろう。
美穂の家は、基本的に母親は夜まで仕事、高校生の姉は部活をせずファストフード店でアルバイトをしている。父親は、出張でアメリカにいる。もう数年は帰ってこないだろう。
父は時々、アメリカのアーモンドが入った甘いチョコレートとか、ハワイの変な置物とかを送ってくれる。母とはたびたび電話しているようだが、美穂と真帆は、全く連絡を取っていない。そういう年頃なのだ。
「お姉ちゃん……なんでいるの。バイトは?」
「いちゃ悪いかよ。バイトはこれから」
ぱくぱくと杏仁豆腐を食べながら、真帆は階段を上っていった。
美穂は台所まで何とか歩き、冷蔵庫の中からキンキンに冷えた杏仁豆腐を取り出した。ラップをガラスの容器からはがしてゴミ箱に捨て、スプーンを棚から取り出し、2階にある自室に向かった。
部屋に入ると、愛用のハートの形をしたテーブルに杏仁豆腐を置き、エアコンのスイッチを入れる。ピッ、という音がした数秒後に、心地よい風が部屋を包む。
「あー…きもちいい……」
この瞬間がたまらなく好きだ。汗でべとべとした体が、一気に冷えていく。
制服のシャツだけ脱いでベッドに放り投げる。こうすると皺が付くから、と言って母は嫌がるが、その母は今は会社で仕事中だ。もうしばらくは帰ってこないだろう。
美穂の家は、基本的に母親は夜まで仕事、高校生の姉は部活をせずファストフード店でアルバイトをしている。父親は、出張でアメリカにいる。もう数年は帰ってこないだろう。
父は時々、アメリカのアーモンドが入った甘いチョコレートとか、ハワイの変な置物とかを送ってくれる。母とはたびたび電話しているようだが、美穂と真帆は、全く連絡を取っていない。そういう年頃なのだ。