美穂と千夏
『レズビアンは、案外自分の身近にいるかもしれません』

 この言葉を目にしたとき、杏仁豆腐を噴出しそうになってしまった。なんということだ。私のために書かれた記事のように思えてきた。

 このタイミングでこの特集。もしかしたら、神様って本当にいるのかもしれない。雲の上から、きっと私の未来を見ていたんだ。こうなることを全て知っていたんだ。同情して、この出版社に「同性愛者の特集を組んでくれ、東京に住む哀れな女子中学生のために」とでも訴えかけたのか。

 そんなありえない事を考えてしまうほど、慌てていた。背中をつーっと冷や汗が流れ落ちて、思わず身震いした。

 体が一気に冷えてきたので、クローゼットからTシャツを取り出して身につけた。はあ…と溜め息を吐いた。
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