午前0時の誘惑
◇◇◇
呆れるほど抱き合って、唇が腫れるほど口づけを交わす。
それでも、時を止めることだけはできない。
海生の腕の中で、時計が午前0時を告げようとしていた。
今夜もまた、ひとりここに残される。
海生が私の元から消える。
堪らなく怖くて、海生にしがみついた。
置いて行かないで――。
「莉良……」
低く囁く海生の声。
別れの言葉は聞きたくない。
両手で耳を塞いだ。
海生の腕が私から離れ、起き上がる気配に目も固く閉じる。
もういいから、何も言わずにこのまま出て行って。
海生が去る姿も、衣擦れの音も、見たくないし聞きたくない。
全身を固くした私の額に海生の唇がふと落された。
静かに目を開けると、まだそばには優しい顔があった。
海生が、耳を塞いでいた私の両手を優しく外し、耳元に唇を寄せる。
「……帰らないから、そんな顔はしないで」