午前0時の誘惑

◇◇◇

薄っすらと差し込む光を瞼に感じて、ゆっくり目を開ける。
ぼんやりする意識の中、手を伸ばして隣を探った。


……海生は?


隣に寝ているはずの、その姿。
それが、どこにも見えなくて――。

一気に目の覚めるような思いで、飛び起きた。


やっぱり魔法が解けちゃったの?


転がるようにしてベッドルームを抜け出した。


どうして?
一緒にいるって言ったじゃない。


勢いよく開けた、部屋の扉。
その向こうに、ソファで新聞を読んでいる海生を見つけて、その胸に飛び込んだ。


「海生!」

「莉良、どうしたんだ?」


海生が驚いて、広げたままの新聞を脇に置く。


「目が覚めたらいないから……帰っちゃったのかと思った」

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