午前0時の誘惑
魔法がとけるとき


「気持ち悪いなぁ。何だよ、さっきからニヤニヤして」

「そうなの。莉良ったらね、朝からずっとこの調子」


清香と陸也に囲まれた社食で、呆れるふたりを前にして、私はひとり、海生との時間を思い出しては、頬が緩みっぱなしだった。

午前0時を飛び越えて朝を一緒に迎えたのだから、上機嫌になるのは当然のこと。

その上……。
海生から渡されたメモをポケットから取り出した。
美しく並んだ海生の少しクセのある手書きの文字。
単なる数字の羅列に、これほど愛着を感じることなんてなかった。

愛しくて愛しくて堪らない。
思わずそこに口づけをしてしまいたくなるほどだ。


「そういえば、莉良、昨日の男だけど」


――そうだった。
海生のことで頭がいっぱいで、陸也に謝ることすら忘れていたのだ。
どれだけ浮かれているというのか。


「陸也、昨日はごめんね」


心に余裕を持って謝れるのも、午前0時を飛び越えて海生と過ごせたからだ。

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