午前0時の誘惑

それでもまだ信じたい。
海生が教えてくれたあの番号を、初めて呼び出した。

真実はまだ分からない。
私が思ったように、兄妹かもしれないのだから。
きっと、私からの連絡を喜んでくれるに違いない。

鳴り始めた呼び出し音に、スマホを持つ手が震える。
そして、数回鳴ったところで、「只今、電話に出ることができません」という、故意に断ち切られたことを知らせるメッセージが流れてきた。

つまり、私は邪魔だということ。
今、この場面で選択すべきなのは、私ではないということにほかならなかった。



< 43 / 72 >

この作品をシェア

pagetop