午前0時の誘惑
聞き上手だから、私もつい夢中になって話してしまうけれど、私だって海生の話を聞きたい。
知り合ってから半年。
いつもこんな調子だった。
「海生のことをもっと知りたいの」
「それじゃ、その話はまた今度」
はぐらかすのもいつものことだった。
手から零れ落ちる砂のように、掴むことが難しい。
「海生ったら、ズルイ」
もう一度、脹れっ面をした私に、海生はいたずらに笑った。
「そろそろシャワー浴びようか」
私の足元に手を伸ばすと、ヒールを優しく脱がせる。
そして、額にひとつだけキスを落とし、私を恭しく抱き上げた。
海生のお決まりの行動。
まるでお姫様のような扱いに、自尊心をくすぐられる。
海生が私に接するときは、いつだって紳士にスマート。
そつがない身のこなしは、そばで見ていて溜息が出るほど。
つい自分が高貴な淑女にでもなった気にさせられる。