午前0時の誘惑

その視線を横顔に感じながら、海生を真っ直ぐ見据える。


「だからもう付きまとわないで」


ありったけの敵意を込めた。

海生の顔に悲しみが滲む。


どうしてそんな顔をするの?
私がいなくなったって、どうってことはないでしょ?


むしろ、こうしてあっさり他の男に託せるんだから、後々なんの心配もいらないのに。

透明感のある海生の綺麗な瞳に影が差すのを見て、胸がしめつけられる。

それを振り切るようにして、彼に背を向けた。
陸也の腕も強引に引っ張って歩き出す。

海生も、それ以上私を追ってくることはなかった。


「莉良、勘弁してくれよ」


海生から見えなくなったと思われるところまで来ると、陸也が私からパッと離れる。


「ごめんね……」

「莉良を寝取った男だって、どこかに左遷されたらどうするんだよ」

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