午前0時の誘惑

◇◇◇

「莉良、本当に出席しないつもり?」


午後から行われる社長交代の式典のために、ロッカールームは、着替える女子社員たちで異様な盛り上がりを見せていた。

その中で、私ひとりだけ帰り支度を始める。

そんな式典に用なんてない。
海生があの女性と微笑んで並ぶ姿を穏やかに見られるほど、私は出来た女じゃない。


「それじゃ、清香、また来週ね」


ぎこちない笑みを何とか浮かべ、清香に手を振った。



< 63 / 72 >

この作品をシェア

pagetop