午前0時の誘惑

軽く睨んで玄関の扉を閉めようと手を伸ばした。


「お、お待ちくださいませ」


間髪容れずに、黒川さんの手がそれを阻止する。
あまりの力強さに、私では太刀打ちができなかった。


「これは冗談でも嘘でもございません。海生様の厳命により、参上した次第でございますから」

「海生の……?」


それじゃ……。


「自分の幸せな姿を私に見せつけるなんて、海生も悪い趣味ね」


そんな男だったなんて、私は海生のどこを見ていたんだろう。
何も知らないにもほどがある。


「いえ、ですから、違うのです。こちらを……」


黒川さんが抱えていた大きな包みを私に無理矢理持たせた。


「ちょ、ちょっと!?」

「このお召し物が合う方は、莉良様を置いてほかにいらっしゃいませんから」

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