破れぬ誓い




「なっ、お前。」


言ってしまった。

勢いで言ってしまった。

今にも消え入りそうな声が暗闇に消えた。

そしてあまりにも小さな私も消えてしまいそうだった。

いや、消えたかった。

この暗闇に紛れて消えてしまいたい。

だって、困っている土方さんを見ると絶望的な感じしかしないのだから。





「なんて、困りますよね。迷惑ですよね。」



告白なんかで土方さんを困らせたくなかった。

仕事に支障がでてしまったら…

どうしよう…取り返しのつかないことをしてしまったのかもしれない…。

断るなら、早く断って…。

アタシを楽にしてください…。


恥ずかしくて、申し訳なくて。

悲しくて私は小さくなってうつむいていた。

カタカタと右腕が震えていた。



「……驚いただけだ。」


断られると思っていただけに、この一言に思わず驚いて顔を上げる。


「驚いた?」







「~~っ!本当は!俺が言うはずだったのに、お前が先に言うから……。」




どんどん小さくなる土方さんの声。


「え?あの、もう一回だけ…。」

「馬鹿、耳聞こえねぇんじゃねぇ?」

「違います!信じられなくて!」


「はぁぁ。」と長い溜め息をつく土方さん。

私の震えている右手をしっかりと捕まえて引き寄せる。

暖かくて厚い胸板に右手が当たる。




手の平に伝わる熱さと手に伝わるほどの鼓動。

緊張が2人を包む…。




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