破れぬ誓い



「悔しいです。」


ポツリと口から零れた。

自分でも気づいていなかった本心なのか。



「何も出来ないアタシが悔しい。」

「辛かったんだな。故郷や屯所、仲間と別れて。」

「違っ…。」

「泣き言一つ言わなかったな。」

「うぅ…。」

「我慢すんなよ。」


頭を撫でていた手がそっと下りていく。

頬を伝う涙を親指ですくうその手つきは優しかった。


「泣け。今だけ許してやる。」


涙をすくったその手はすっと背中に回る。

そのままぎゅぅっと抱きしめられる。



暖かくて優しい土方さんの鼓動が聞こえた。


どれだけ土方さんに触れていなかったんだろう。

抱きしめなければ、手を繋がなかった。



嬉しいのか、悲しいのかわかない。


ただ、土方さんに抱かれながら泣いた。

その胸を涙で濡らして。







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